沖縄の、記憶の旅

SNSってありがたいなあって思える再会や出会いがたまにある。
石垣の店を閉める少し前にたまたま訪れてくださったライターさんとの再会。しかも本を出版されると知って感激してメッセージを送った。その本は沖縄の簪(ジーファー)をテーマに、当時を生きた人々に思いを馳せ、金銀細工職人やそのご家族の語りをまとめられた「ジーファーの記憶」今村治華 著(南方新社)。
出版元の鹿児島の出版社から送って貰いたい!と注文して届いた、きれいな紅型作品が表紙の本。
私が知らない事ばかりで、興味深く読んでいる。

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この本の中でも語られる首里の又吉健次郎さん。
島に住んだ頃から憧れがあって、いつか工房に伺ってみたいと静かな思いを抱いていた。
治華さんと出会った時だったか?忘れてしまったけど、既に取材を重ねていらした治華さんからも工房を訪れる事をお勧めされて、思いを強くしたのだった。
で、石垣を出て本土にきて4年位が経って、石垣里帰りの前に沖縄本島に寄って首里の工房を訪ねた。もの凄く緊張して道すがら血圧がおかしくなったのを覚えている。
ドキドキして中に入ると又吉さんが工房に座っておられてお客様と会話していた。
私は工房にある房指輪やジーファーを見ながら、近くにいたお弟子さんと何となく会話を始め、石垣で彫金のお店をしていた事を話したら、お客さんが帰られたタイミングで何と又吉さんにその事を!
「いやいやいや...」海老の様に尻込みな自分。座られている又吉さんに招かれ、正面に座る、地面に潜っていきたいモグラの様な気持ちの自分。
緊張しながらも、こんなありがたい機会を満喫しなければと、お話させて貰った。
その中で又吉さんがブログにかかれていた家訓を、勝手に心の底に置いている話をしたら、「そんな大層な事を書きましたか」と、柔らかい笑顔と共に返されたのを強く覚えている。
工房の看板の画像を撮ってなかったかな、と見返したら何も画像がない。改めて自分がどれだけ緊張し、どれだけ幸せな時間だったか、写真が1枚もない事でよーく分かる。

銀に対する思い。
私が素材としての銀を最初に手に取って25年位経った。どんなふうに変化して、変わらないものは何だったろう?
私事で、生きてて何度目かの大きな変わり目にある現在なのだけど、この時に治華さんの文章で沖縄の金細工(くがにぜーく)の本を読める事が、不思議なタイミングで、思いが深くなる。
ああ、沖縄なぁ。沖縄よ。